[実例2]食べるラー油
爆発的ヒットの背景
2009~10年に巷で最も話題をさらった、食べる調味料シリーズの「食べるラー油」。
当社でリリース後、 販売開始から半月で6000本を完売するなど、爆発的にヒットした。
市販品の人気に引きずられる形で、業務用商品がリリースされるという
通常とは異なる流れでの商品開発ながら、ここにも同社の「勘」が働いている。
さらにはここで、作り手のリスクについても代表の土居内は言及する。
売れているもの、旬のものだからこそ重要性が増す供給責任とは?
大手ウェブ通販サイトで、
販売開始12時間で300本を完売。「完売御礼」の札が立った。
--- まさに爆発的ヒットですね。
ありがとうございます。
これは非常に珍しいケースで、市販品(桃ラー)が先行して人気を博したものでした。
それに外食チェーンが追随して、その人気に拍車がかかったものです。
これにより、店舗からの開発依頼が相次ぎました。
1件や2件ではなく、引きもきらずあったものですから、要求は根深いと判断しました。
しかし、市販品を外食チェーンにそのまま採用いただくことは不可能です。
定価があり流通されていますので、絶対に成立しない話といってもいいでしょう。
だから、業務用が必要となります。
開発しないといけない、そんな思いから始まったものでした。
--- 「業務用」ということですが、市販品とはどのような違いがあるのでしょうか?
まず、市販品は一般向けに、既に味が調えられているものですから、プロ仕様ではありません。
決してマズいという意味ではありませんが、プロが使うものとしては「ユルい」。
その特徴のひとつとして、油の配分量が多いことが挙げられます。
油というものはいつでも、店側で調節することはできますので、この配分量を見直しました。
具と油の配分量を、逆転させたと言ってもいいでしょう。
これが業務用「食べるラー油」です。
--- あくまでプロが納得するもの、として開発されたわけですね。
そうですね。
プロが納得するためには、下手なごまかしは通用しませんから。
こうした流れを受けて、一般消費者の市場もターゲットにしました。
小売店での販売はできないので、
単価の大きなものが好まれる通販で販売することにしたんです。
結果としては半月で6千本を売り切るなど、大成功でした。
--- こうした「旬」のものを取り扱う上で、何か注意されることはありますか?
まず、作り手が製造キャパオーバーになるというリスクを考えることです。
「需給のバランスを考えずにいま売れてるから、どんどん発注しちゃえ」では、運任せのようなものです。
ですから、
1回の発注単位をいかに少なくして、
その間に受注発注・販売体制を整えることが必須となります。
そのかわり、売れている間は露出の頻度は高くしてほしい、とお願いはします。
商社である私どもからすれば、物は流れてなんぼ、という世界です。
確かに、「いくらでも供給できる」メーカーは魅力的に映りますけど、
それが万が一「全く供給できなくなった」、場合のことを考えると・・・
追加発注しなかったことから生まれる損益よりも、
謝罪まわりのコストの方がかかってしまいますので、不確実な情報には振り回されることなく
顧客に対する供給責任を優先します。
--- しかし消費者のニーズが高い場合、
どのようにメーカーとの折り合いを付けるのでしょうか?
説得をするしかありませんね。
「1000本の発注だけど、需給リスクがあるから300本×3回にしておきましょう」といったように。
そして私どもならその理由を説明できます。
上にも挙げたように「露出の頻度」ですとか、販売テクニックなど、
メーカーと商社は、そういう話し合いをする必要性があるとも考えます。
特に旬のものでは顕著なのですが、
メーカーの製造リスク、在庫リスク、買い手の販売予測に対するリスク、
これらのバランスを上手くとらないと、誰かが痛い思いをすることになります。
これは火種となって、後々必ず遺恨として残ります。
特にゾロ品(偽物)を作るメーカーは節操のない考え方をします。
供給責任について蔑ろに考えているんでしょうね。
ですから私どもは、
メーカーさんに対しても、買い手さんに対しても、リスクを要求しません。
誰もが嫌な思いをしないように、きっちりバランスを取りながらの仕事を心がけています。
さらには、どんな難題に対しても「できない」とは言わず、
できないなら「できない」ことの、そのリスクや理由を説明をします。
納得してもらえるまで。
供給できないことのペナルティーもリスクも分かっているし、
逆にそのデメリットを説得説明できるのは、
プロジェクトののハブである「開発型の商社」、アトラスプランニングだからこそ。
そう思っています。
そのお蔭でこれまで、取引先の倒産はゼロ。
「アトラスと組んでて良かった。」
取引先の方々からこう仰っていただけるのは、非常にありがたいですね。